美術教師 米谷義子のつぶやき
monthly essays


「 青の時代 」 APRIL 1999

    小学生のころ、青虫を育てたことがある。近くの畑で採ってきた紋白蝶(モンシロチョウ)の幼虫だ。ジャムの空き瓶に5,6匹を入れ、ガ−ゼで蓋をした。瓶いっぱいにキャベツを入れても数時間で食べ尽くしてしまう。すべてがなくなるとガーゼのところまできて物欲しげだ。さらにキャベツをつめ込む。それを何度も繰り返した。当然もりもりと、大きく立派な青虫に成長した。その凄まじく旺盛な食欲に呆れ果て、また、あまりに詳しく観察したためか、一時期気持ちが悪くてキャベツが食べられなくなったことがある。  ある朝、2匹の青虫が木の葉を半分にしたような形のサナギになって固まっていた。次の日、他の数匹も固まってしまった。日が経つにつれ、青みが少なくなって枯葉色になる。生きているのかな、大丈夫かなと心配し始めたころ、突然メリメリと背中の皮が破れ、しわしわの羽がちょっとづつ姿を現し、やがて見事な蝶になった。乳白色の羽は絹のように滑らかで、その美しさは神々しくさえあった。少しの間室内を巡回したかと思うと、あっという間にあけはなした窓から次々に、ひらひらと去って行った。
 長い休み明けの新学期女子校ではきまってこんな話題が飛び交う。
 「あっ、先生少しやせた?よく見るとそうでもないか。2組のk子ね、すーごくやせたんだよ。夜お豆腐とコンニャクしか食べなかったんだって。それで3キロもやせたって。ヨネちゃんも頑張んなきゃ。」
 若い女の子にとっての二大恐怖は太ることと老けることらしい。勉強にはとんと関心がない子もダイエットの事になると真剣だ。そして、余程大人になるのが嫌なのか「18才過ぎたらババアよね。」などと言う子もいる。「じゃあ、そのふたつともを手に入れてしまった私は、いったいどうすればいいの?死んだ方がまし?」と冗談半分に言うと本気で気の毒そうな表情をするからまいってしまう。見た目ばかりが気になる年ごろ、解らなくもないがたまに精気のない顔して、げっそりとやせた生徒を見ると心配になる。そしてなぜか青虫のことを思い出すのだ。    







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