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Tさんの希望は服飾系専門学校。 「志望動機は絶対聞かれるっていうから、これ書いてみたんだけど。どお?みてくれる?」 じゃあ、読んでみて・・・。 「うーん、皆が言いそうな当たり前の一般的なことだけならべても印象に残んない。 マニュアル通りじゃなくて、Tさんらしい個性をもっと出したら? 学校見学会に行って、何をやって、どう感じたわけなの?」 「そっか。でも何を感じたって言われてもぉ・・・。」 「まぁ面接って言うのは、その人の雰囲気を見るのも目的だから、まず何より お行儀を良くしなくちゃね。」
思えばこの人には授業中に何度注意したことか。短いスカートなのに立て膝を
するのだ。異性ならずともギョッとさせられる。言葉遣いに関してもTさん自身、今さら
「どうしよう。」と心配そうだ。「私、目上の人でもすぐタメ口になっちゃうんだよね。敬語なんて使えないよ。 ヤバイよね」とすでタメ口。まぁ、考えてみればタメ口じゃない人を探す方が難しい。 日ごろの生活や人となりは、外見や仕草に自然に現われる。 面接だけというのも筆記試験のみより、ある意味でとても厳しいことかもしれない。 短大食物科志望でフードコーディネーターをめざすSさんは髪型を気にし出した 。 いつも注意されながら無視し続けているのを知っている。 「先生見てみてほら、眉毛も一生懸命生やしてるの。それにローファーも踏んづけて穴あいてるし、 靴は、A子に借りるんだ。」これには思わず笑ってしまった。 しかし乍ら、その場だけ繕うことが良いことなのか。 又、面接官にどれだけ本当を見抜く力があるのだろうか。 期間限定の清純派を演じるのも大変なことでしょうが、皆さんどうか頑張って・・・。 そして一週間。Tさんが合格したことを報告してくれた。Sさんも無事合格、余程嬉しかったのか二度も(!)喜びを伝えてくれた。 小柄なSさんが白衣を引っ掛けて廊下を小走りにやってきて、「先生これあげる。 いろいろとありがとね。」とラップに包まれた温かな黒い固まりを私の手の平に載せた。 それは、家庭科の調理実習で作った出来立てのおはぎだった。 甘さが程良く実に美味しい。うん、これなら大丈夫、きっと立派にフードコーディ ネーターとしてやっていけるよ。 ま、ひとまず、良かった、良かった。 |